ISD条項とは?

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http://www.youtube.com/watch?v=-fH-yoh2tAw#t=2m50s

カナダ政府が裁判に負けて環境規制を米国企業の訴えにより外されたという話。つまり私企業の訴えで法律が変わってしまった

米韓FTAにもISD条項が組み込まれている

TPP反対派が、ISD条項が治外法権に他ならないものであることを示すためによく例に挙げているのが、カナダ連邦政府を米国化学企業の現地子会社が訴えた事案です。この子会社はメチルマンガン化合物(MMT)を製造していました。1997年加連邦政府がMMTの流通を禁ずる新法を作ったところ、米企業がそれにより甚大な被害をこうむったとして2億5100万ドルの支払いを求めて加連邦政府を訴えました。

この件は、同時並行でカナダ・アルバータ州が、新法が国内通商協定(AIT)に違反するとして専門委員会に提訴し、委員会での検討の結果、新法は国内通商協定に違反すると認定されました。また、MMT自体については流通を完全に禁止する必要のあるような危険な化学物質ではないことも明らかになりました。この専門委員会の判断をカナダ連邦政府は受け入れ、翌年法律を廃止することになりました。それに伴い連邦政府は米社に仲裁費用と遺失利益として和解金1300万ドルを支払いました。

これで明らかなように、カナダが連邦制という特殊な政体を採っていることから生じた政府の失策により、禁止すべきでない化学物質の流通を十分な検討もなしに誤って禁止したことが原因であり、ここから化学物質に対して十分な検討をせず規制を課すべきではないという教訓を引き出すなら分かりますが、TPP反対派の主張しているような「カナダ国内で禁止されている有害な化学物質を強制的に輸入させられ、かつ法外な和解金をむしり取られた」という表現はミスリーディングであることはいうまでもありません。この例は、むしろ逆に投資先国の失政からわが国の企業を守る上でISD条項が大変有効であるということを示しているわけです。
TPP:ISD条項は治外法権か? (金子洋一「エコノミスト・ブログ」)

1.NAFTA に基づく仲裁判断 NAFTA1102条は、次のように内国民待遇を定める。
1. Each Party shall accord to investors of another Party treatment no less favorable than that it accords, in like circumstances, to its own investors with respect to the establishment, acquisition, expansion, management, conduct, operation, and sale or other disposition of investments.
2. Each Party shall accord to investments of investors of another Party treatment no less favorable than that it accords, in like circumstances, to investments of its own investors with respect to the establishment, acquisition, expansion, management, conduct, operation, and sale or other disposition of investments.
これは自由化を含む内国民待遇の規定であるが、当然投資家および投資財産について、「投資後」の内国民待遇を保証しており、紛争はこれをめぐって起こった。

(1)S.D. Meyers事件
この事件では、カナダのPCB廃棄物を米国で処理する形で事業を営んでいた米系廃棄事業企業が、カナダの廃棄物輸出禁止措置によって事業停止のやむなきに至ったことが、カナダで廃棄物処理を行っているカナダ企業との関係でNAFTA1102条違反に当たるかどうかが問題になった。仲裁廷は、問題の米系企業とカナダ企業の間には、PCBの処理をめぐって競争関係にあったことを指摘して、申立人とカナダ企業は「同様の状況の下」にあると判断した(250-251項)。また内国民待遇の判断にあたり、意図は重要であるものの、保護主義的な意図が必ずしも決定的ではなく措置の実際の影響が必要要件であるとして内国民待遇違反を認めた。
この判断の前提として、仲裁廷が次のように述べた。
The Tribunal considers that the interpretation of the phrase “like circumstances” in Article 1102 must take into account the general principles that emerge from the legal context of the NAFTA, including both its concern with the environment and the need to avoid trade distortions that are not justified by environmental concerns.(para.250)
要は、内国民待遇規定の解釈に当たっては、NAFTAの法的文脈を考慮する必要があるということである。
また「同様の状況の下」にあることが肯定されると、国内系企業の保護目的までは不要であり、差異の効果で足りると述べたとみることができる。

(2)Pope & Talbo事件
この事件では、米国・カナダ協定によって軟材の輸出許可制がとられたことによって、カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州で軟材輸出を営む米系企業に輸出手数料が徴収されるようになったことが問題化した。具体的に差別として問題にされたのは、①輸出規制の適用除外州と適用州の差別、②輸出規制適用州のうち、生産・輸出シェアの増加に起因する、ケベック州とBC州の生産者間の差別、③BC州内の生産者間の差別の3つのレベルの差異である。
仲裁廷は、①表面上も事実上も外国投資家と国内投資家を区別せず、かつ②その他の点でもNAFTAの自由化目的を損なわない合理的な政策と妥当な結びつきのある場合以外であれば、異なる取り扱いは内国民待遇違反を推定させると述べ、本件で問題とされた措置がこの条件に当たらないとして申立人の主張を退けた。
内国民待遇違反の有無の基準を提示する際に、仲裁廷は次のように述べた。
The Investor submits that the legal context of Article 1102 includes "the trade and investmewnt-liberalizing objectives of NAFTA." The Tribunal agrees.(77 項)
NAFTA1102条の解釈に当たっては、目的を含むNAFTAの法的文脈を考慮しなければならないという趣旨である。
また差異の判断においては、外国系企業と国内系企業の扱いに、事実上の差異があり、ホスト国の合理的な政策に関連しない場合には、内国民待遇違反が推定され、それを覆す責任がホスト国にあるとした。国内産業保護の目的は、S.D.Meyers事件同様に不要というのが前提である。

(3)Feldmann事件
メキシコでタバコの輸出業を営む米系企業(CEMSA)が、従来は消費税還付を受けていたが、制度変更によって生産業者から直接タバコを仕入れた輸出業者のみが消費税の還付が受けられることになったために、小売り業者から仕入れていたCEMSAへの消費税還付は認められなくなり、この点が問題化した。
仲裁廷は、「同様の状況の下」にある会社の母集団は、タバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業であるとし、そのうえでメキシコ系企業を優遇したと判断し内国民待遇待遇違反を結論した。
この事件でタバコの再販売/輸出事業を営むメキシコおよび外国系企業を「同一の状況の下」にあると解釈したのは、メキシコ政府がこの主張に同意したためである。本件は、「同一の状況の下」にあることが肯定されれば、内国民待遇違反は当然に認定されるケースであった。

(4)Methanex事件
カリフォルニア州がガソリン添加剤MTBEの使用を禁止したために、MTBEの原料であるメタノールを生産していたカナダ系企業が、使用が許されるガソリン添加剤ETBEの原料であるエタノールの生産事業者との差別を内国民待遇違反と主張した事件である。
仲裁廷は、「同様の状況の下」について、競争関係にあるモノを対象にして内国民待遇を考えるのではなく、同じ商品の製造者を対象にして考えなければならないとして内国民待遇違反の主張を退けた。
この議論の前堤として仲裁廷は次のように述べた。
Given the object of Article 1102 and the flexibility which the provision provides in its adoption of "like circumstances," it would be as perverse to ignore identical comparators if they were available and to use comparators that were less "like,"as it would be perverse to refuse to find and to apply less "like" comparators when no identical comparators existed. (Part IV, Chapter B, para.17)
NAFTA1102条の解釈において、その目的を考慮すべきことが説かれたのである。

(5)UPS事件
米国系の宅配業者(UPS)が、カナダ関税法改正によってカナダ・ポストのみが優遇されるとして仲裁に訴えた事件である。仲裁廷は、両者のシステムの差、また諸国における郵便事業と宅配業の認識の差を根拠に両者が「同様の状況の下」にないと判断した。
仲裁廷は宅配事業と郵便事業が比較対象にならないとしたが、その根拠は両者に対する諸国の認識の相違であった。なお、本事件におけるCass仲裁人個別意見は、1102条の解釈はNAFTA全体の中で行わなければならず、そのように解釈すれば「同様の状況の下」にあるかどうかの判断は、競争関係にあるかどうかがポイントだとした。したがって、Cassによれば、競争関係にある者について異なる扱いをすれば1102条違反の推定が成り立ち、カナダはその推定を覆す主張を述べることはできなかったと結論した。NAFTAを条約の目的等を踏まえて解釈するか、文言のみによって解釈するかによって結論が変わることが理解できる。

(6)ADMS事件
砂糖以外の甘味料についてメキシコが課税措置をとったことについて、高果糖コーンシロップ(HFCS)を製造する米系企業が、砂糖事業者への優遇措置として仲裁に申し立てた。仲裁廷は、HFCS事業と砂糖事業が競争関係にあり、したがって「同様の状況の下」にあるとしてメキシコの内国民待遇違反を認定した。
仲裁廷が、競争関係を基準にして事業者が「同様の状況の下」にあると認定した前提は次のようなものであった。
Basic function of this provision is to protect foreign investors vis-a-vis internal regulation affordingmorefavorabletreatmenttodomesticinvestors(193項)Inordertodeterminethe meaning of the expression "in like circumstances" in Article 1102, paragraphs 1 and 2, we examine these words in their ordinary meaning, in their context and in light of the object and purpose of Article 1102 (Article 31.1 of the Vienna Convention on Law of Treaties). (197項)
仲裁廷は、この解釈が明示的に条約法に関するウィーン条約31条に照らして解釈した結果だというのである。
以上の判断の後、仲裁廷は、Methanex事件との違いについて、①HFCS生産に従事するメキシコ系企業が存在しないこと、②メタノールそれ自体がガソリン添加剤として使用されるものでないことを挙げて説明した。また差別的な取り扱いを内国民待遇違反と解した点については、メキシコの砂糖産業を保護する意図があり、そのような効果があったことが根拠とされた。「同様の状況の下」にあるかどうかが、内国民待遇違反認定の最重要ポイントであった事件である。
内国民待遇違反を決定する要因は何か

関連項目[編集]